建築オタが非オタの彼女に建築世界を軽く紹介するための日本の建築10作品

建築関連が無かったので書いてみました
アニオタが非オタの彼女にアニメ世界を軽く紹介するための10本
◯◯オタが非オタの彼女に◯◯世界を紹介するための10本まとめ - What is Normal 〜 もはや普通がわからない 〜
元ネタに極力合わせるようにしたので、苦しいところはありますがご容赦下さい。
海外編とかも誰かやって欲しい。


まあ、どのくらいの数の建築オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、

「オタではまったくないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、

 その上で全く知らない建築の世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる

ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、建築のことを紹介するために

見せるべき10本を選んでみたいのだけれど。

(要は「カーサ ブルータス」の正反対版だな。彼女に建築を布教するのではなく

 相互のコミュニケーションの入口として)

あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴う海外の建築は避けたい。

できれば都心部、遠くても地方都市近辺にとどめたい。

あと、いくら建築的に基礎といっても古びを感じすぎるものは避けたい。

映画好きが『カリガリ博士』は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。

そういう感じ。

彼女の設定は

建築知識はいわゆる「ヒルズ」的なものを除けば、ランドマーク程度は見ている

サブカル度も低いが、頭はけっこう良い

という条件で。

まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。


まあ、いきなりここかよとも思うけれど、「東京オリンピック以前」を濃縮しきっていて、「東京オリンピック以後」を決定づけたという点では

外せないんだよなあ。場所も代々木だし。

ただ、ここでオタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。

この情報過多な作品について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて必要最小限の情報を彼女に

伝えられるかということは、オタ側の「真のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。

アレって典型的な「オタクが考える一般人に受け入れられそうな建築(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」*1そのもの

という意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには

一番よさそうな素材なんじゃないのかな。

「建築オタとしてはこの二つは“ポストモダン”としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。


ある種の思想建築オタが持ってるメタボリズムへの憧憬と、文化庁国立新美術館設立準備室監修の美術館的な考証へのこだわりを

彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと、それに加えていかにも黒川紀章

「黒川的なメタボリズム」を体現する箱だけの美術館

「黒川的に好みなシンボル」を体現する円錐型エントランス

の二つをはじめとして、オタ好きのするデザインを建築にちりばめているのが、紹介してみたい理由。

たぶんこれを見た彼女は「MoMAの人だよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。

そのMoMA以外が海外で続いていないこと、美術館が建築界では世界レベルになったこと、

普通なら有名になって、それが海外に輸出されてもおかしくはなさそうなのに、

海外で作品がつくられないこと、なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。

「やっぱり建築は都市のためのものだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは「ヒルサイドテラス*2

でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この作品にかける伊東の思いが好きだから。

革新のアイデアで削りに削ってそれで柱無し、っていう構造が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、

その「捨てる」ということへの新しさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから。

メディアテークの構造を俺自身は今は革新とは思わないし、もう思わないだろうとは思うけれど、一方でこれが

丹下や前川だったらきっちりラーメン構造にしてしまうだろうとも思う。

なのに、各所に頭下げて迷惑かけてチューブで作ってしまう、というあたり、どうしても

モダニズムの物語を形作ってきたものを捨てられるオタク」としては、たとえ伊東がそういうキャラでなかったとしても、

親近感を禁じ得ない。作品自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。


今の若年層で教会に行ったことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。

直島よりも前の段階で、安藤の哲学とか陰影の技法とかはこの作品で頂点に達していたとも言えて、

こういうクオリティの作品が宗教建築でこの時代に建っていたんだよ、というのは、

別に俺自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなく建築好きとしては不思議に誇らしいし、

いわゆるヒルズや直島でしか安藤を知らない彼女には見せてあげたいなと思う。


隈の「目」あるいは「空間作り」をオタとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。

「有名建築の中を毎日生きる」的な感覚がオタには共通してあるのかなということを感じていて、

だからこそ東雲キャナルコートCODAN磯崎新コーディネート以外ではあり得なかったとも思う。

「デザイン化した日常を生きる」というオタの感覚が今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の

源はCODANにあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、

単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。

これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。

こういう現代アート風味の空間をこういうかたちで現実化して、それが非オタに受け入れられるか

気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。

9本まではあっさり決まったんだけど10本目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的にSANNAを選んだ。

丹下から始まってSANNAで終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、2000年代以降の美術館時代の先駆けと

なった作品でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。



というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10本目はこんなのどうよ、というのがあったら

教えてください。

*1:景観的な意味で

*2:代官山 槙文彦設計